髪を梳くだけで私の何がわかるという、
私の何を見て何をどう判断するのだという、
私はそこにはいないんだ、
私の本質はもっともっと深い所に、
お前を本当に愛しているのは、もっともっと深い所に奥に、奥にいる私だというのに。


「お前は本当に綺麗な髪をしているな。」

髪を梳かしながらお前は言うが、知っている、当然だ。お前がよくそう言っては私の髪に触れるものだから、手入れだけは怠らないのだ。気づいていないだろう?別に、気づいてなくて構わないんだ。気づいていようがいまいが、愛してくれるのなら。
あぁそうして唇を重ねたところで一体何が変わるというのか。

「誰に物を言っている?この私だぞ」

「あぁ、そうだったな。お前は髪の先から爪の先まで完璧だ。」


感心するな、呟く声も、私は愛しくてたまらない。
愛しい相手に触れられながら触れながら、私は頭の隅の方で、町で綺麗な着物で飾られて売られていた人形を、思い出していた。
目が合うが、私は正確にはお前を見ているわけではなく、お前は正確には私を見ているわけではなく、ただ曖昧に絡んでしまった視線が私は外せない。
私はこんなにもお前のことを愛しているというのに、お前の心は一体どこにあるのだろうな。合った視線すらも合っていなくて本当はどうすればよいのか私は分からずに戦慄しているのだ。お前は決して私を愛しているわけではない。なのにどうしてこうも私を綺麗だと讃するのだろう。
人形ならば愛されたのか。
考えたところで私は人を恋い己に悩み闇雲に思考をし続ける人間でしかあり得なくて、それがどうしようもなくもどかしいのだ。


「だから、当然だと言っている。私を誰だと思っているんだ。」

この立花仙蔵を。愛してはくれないお前のことしか愛せない、この哀れなニンゲンを、お前はどう見ているんだと問うているのだ。


「立花仙蔵、だろう。おれの知り得る中で一番きれいな人間だ。」


あぁ、そうだ、私は人間だ。
人形にはなれやしないのだ。