竹久々
陽光は温かく降り、貴方の笑みは柔らかい。空間はそれだけで枷も柵もない檻に変わり、私を閉じ込めてこの胸を飽和させた。甘い毒ではなく、甘い薬だ。体に慣れさせた所為で効かなくなった毒も薬もあるけれど、ここから逃げ出せるような自分には、きっと出会うことはない。僅か時が経てば、日も傾き温かい陽光が失われるように、あるいは、そこで笑う人と、私がいつまで一緒にいられるか、一秒先の保証なんてないように、玉響なことだと十分すぎるほどに分かってはいた。
「幸せだよ、なァ、兵助」
名前を呼ばれて、笑い返す。どうしてもっと自然に笑えないのだろうか。
八左ヱ門は、くしゃりと笑う。そして、意図もなくただだらりと手を下ろしたままで、髪だってぼさぼさのままで、それなのに、背筋だけはしゃんとしていた、なんてちぐはぐな姿。
どこまで貴方はあなた自身を保てるだろうか?一秒先だって分からないのは、誰ひとり例外なんてないはずなのに、それでも八左ヱ門はしゃんとしたその姿で、私に今が幸せだと言って、笑った。