竹←久々寄り


亡き人、ここに眠る。誰かも知らぬ人の墓。こんな山道には人もさして通らないだろうに。
可哀想な人もいたものだ。焼かれ埋められ墓石をのせられ、それでこの現の世への恨み妬み憎み嫉みが昇華されるんなら、みんながみんな幸せなのだろうかと思案しても死後など分からないのでそこでやめた。
獣は土にかえる。墓石もない。だから存在した証明など一つとして残らず森羅万象の巡る世界へ取り込まれていく。誰かの記憶に残るのは、それはそれはすばらしいことだけれど、だったら俺はそれよりも、この廻る世界という概念の一部になりたい。獣になりたいわけでない、決して。
ただ獣みたいな生き物がおんなじように世界の中で巡って行くのなら、ひたすらにそれに寄り添いたいと思ったのだ。心も体も離れてしまっても構いやしない。そう思い込むことだってできた。結果だけでもいい。結果だけでも寄り添いたい。現の世の存在証明よりも、常世の結果があればいい。そう言い聞かせることですうと心が落ち着いて空すら飛べそう。
(俺にとっての世界を賭けて、)
(ただ愛していると上手に形にできるのなら、よかった)
どうしても感情を言語レベルにして伝えようとしても、拙い出来になってしまう。それでも愛しているということだけは伝わっているみたいだから、日々は平穏に幸せだけれど、本当に大切なことは、それじゃない。それじゃないんだ。