咄嗟に声が出た。
「え、」
だって、驚いた。
「ん?」
隣に座る兵助が、勘ちゃんどうかしたの、と声をかける。
兵助があまりに平然としているから、勘右衛門は逆に戸惑う。
「兵ちゃん、寒くないの?」
勘右衛門の指は、兵助の昼食メニューのひとつである冷奴に向けられている。たまに定食のメニューになるものより少し大きいそれに生姜と葱が乗っている。
「ああ、もう冬だもんな。」
そうじゃない、と思う。
暑いときにわざわざ熱いものや辛い物を食べたくなる真夏の心理は、あまり賛同はしないが、まぁ、分からなくもない。ただ、寒いときに冷えたものを食べるのは、どうなんだろう、と思う。いくらその上に申し訳程度に乗っている生姜に身体を温める働きがあろうとも、冷たい奴と書いて冷奴。
それが、兵助の好物なのは知っている。
この十六年間、皆がそれぞれ自身の確立のために個性というものを身につけていったことも知っている。知ってはいる、けど。これはどうなのだろう、と勘右衛門は迷う。今日は実技の時間で校外で昼食をとっているだろう、ろ組の三人はこれを普通に見ているのだろうか。いや、でも、この級友には、冬に温かいものを食べることを教えてあげなくてはならないのだろうか、と、思った。むしろ、豆腐の摂取の仕方ならば他にもあるだろうにと。そう、兵助の隣でうどんを啜りながら勘右衛門は思った。

そして思い至った。それが、その日の授業が全て終わってからだった。
思い至って、そのまま、五年ろ組の名物コンビの部屋へ向かった。パン、と勢いよく襖をあけると、鉢屋三郎、不破雷蔵、竹谷八左ヱ門がそこにいて、勘右衛門はありがたいと思った。
「今晩、久々知兵助と尾浜勘右衛門の自室にて、湯豆腐大会を開催したいと思います!」
「「「理由は察した。」」」