許さない。許せない。許したくもない。
もう、許す許さないとかの問題じゃない、これは。
どうして、
ねぇ、どうして。
あの人に想いを寄せるあなたの気がしれない。
どうしてあの人を想うの。私を含めほかの誰でもない、あの人を。
酷い。だって、そんなの、酷い。
お願いだから、あの人に声をかけないで近づかないで話さないで笑わないで。
あの人はあなたが話しかけたら、嬉しそうに微笑むことも分かっているから。あの、端整な顔で美しく微笑むこと。
あなたがあの人を想うのをやめてくれるのだったら、星にだって月にだって神にだって祈ってもいい。




だって、あの人は、私の絶対なのに。




どうして。私にはあの人しかいないのに。
あなたの中には絶対なんてないんでしょう?
恋い焦がれるよりも壮絶、慕うよりも切実。こんな感情をあなたはしらないんでしょう?
それなのに、なのに。
私の中からあの人を奪っていかないで。
あぁ、あの人を想うくらいだったら私を想ってくれればいいのに。
そしたら私はあの人を奪われることもなく、あの人は私に嫉妬くらいは抱いてくれるでしょうか。
それならそれでいいかもしれない。
なんでもいいのに。あの人が誰かに奪われてしまうことさえなければ、なんだって。
こんなに必死で、そう、それこそ文字通り必死の思いで私があの人に恋い焦がれても、慕っていても、私は決してあなたを所有してしまうことなんてかなわないのに。
それなのにあなたがあの人を奪ってしまうなんて、耐えられない。
本当は、本当は、誰かがあの人を想っていたって全然気にしないのだけれども、それがあなたなのがダメだった。
分かっているから。
あの人は私じゃない、貴方を選びます。
私の絶対はあの人で、あなたは心の強い方だから、おそらく絶対などつくらずに生きていくでしょう。けれど、あの人の絶対が貴方になることは、十分にあり得るのです。
私もあの人も、とても心が弱いから。
ただ、それでも私とあの人は違う。あの人は人一倍弱いけれど、人より二倍強がっていて、人の三倍は強かだから。
本当は怖い。何よりも、あの人の視線に私が映らなくなることが。
私にはやはりあの人しかいないから。
あの人を私だけが所有してしまいたい。私だけが、あの人を慕っていたい。あの人を思い続けるのが、私だけに許された行為になってしまえばいい。













心の中は独占欲でいっぱいだけれど、行動はおろか言葉の端にもそれは出せない。あくまで全部全部自分の中で飼っている。飼いならせるはずもなくて持て余してる。