三つ下の後輩が、寒い寒いと訴えてきたので、火鉢に寄れ、と言ってやった。
「お前、」
裸足だった。通りで寒い。見たら羽織った半纏の綿も随分と薄い。これでは寒い。
「あれ、本当だ。足袋履いてたかと思ったのにな。」
「気付かないでいたのか。」
「寒いことにはきづいてました。」
それはそうだ、と小平太は思う。無自覚方向音痴と言われ知られているこの後輩は、どちらかと言うと無頓着でもある。
 さっきから火を焚いてもなおも悴む手を火に翳していた。火にかざせばあたたかい。あたたかい、が、若干痛い。本当なら、風呂のようにお湯につけるのが一番いい。痛くないのに、温い。だが水を持ってくるには外は寒すぎて面倒くさい。第一、お湯に浸せば確かに温いのだが、手を出したときに湯が一気に冷えて寒いことを知っていた。
 そうしているうちに、うとうととしてくる。眠い。寒いときは布団に包まって寝てしまうのが一番簡単で、温いと知っている。
「三之助、お前、取りあえず、布団に包まってろ、」
そう言って、畳まずに散らかったままの(毎朝長次に片付けろと言われるのだが、何分面倒くさい)布団を引っ張ってきて頭の上にかぶせてやった。ので、もごもごと三之助が何か言っていたが、何と言ったのか分からない。
「・・・・っ何も頭からかぶせなくとも!」
ようやく顔を出した三之助が不満そうにそう言った。
「あぁ、わるいわるい。」
 言うほど三之助が怒っていないことも分かっていたし、そもそもあまり悪いとも思っていなかったので、形ばかりで謝った。三之助はくすりと笑って、あ、これあったけー、と布団に顔を埋めたので、純粋にかわいいと思った。かわいいと思ったが、その直後に、自分が眠いことを思い出して、ちょっとだけ羨ましくなった。
「三之助、三之助、」
 名前を呼ぶ。
 私が呼べば、条件反射のように私を見るこれは、随分と愛らしい生き物である。(愛らしい生き物であるのだが、それを理解しているのはおおよそ私だけで丁度いい)
「何ですか」
「それ、私も、入りたい。というか、入れろ。」
「え、」
三之助が肩にかける形で包まっている布団を剥いで中に入る。温い。さらに温くなるように、三之助を思い切り抱きしめると、思った以上に心地よくて、またとろとろとする。うとうととする。
「眠いなァ、」
「・・・・俺はそうでもないです。」
「そうか。」
 そうか、と言いはしたけれど、結局眠くて意識が今にも飛びそうである。さんのすけ、と名前を呼ぶと、腕の中で微笑む気配がした。それで、寝た。





まどろみの冬、