「お前、どうして生きてこれたんだろうな。」
「・・・・・何、それ。」
「危なっかしい。」
きょとんとする蔵馬の顔は幼い。
昔からこんなに童顔だったかと幽助は思案したが、出会った当初はそんな風には感じていなかったように思う。
出会った時よりも随分と妖気を取り戻しつつあるらしい蔵馬は、ときどき驚くほど冷たい、色の窺えない(氷やらガラス玉の類を連想させる)表情を見せるくせに、それに比例して彼は今とても、ただの人間臭い。
自分、を、持った安定した生き物。ただそれがあまりにも不安定なところで安定するものだから。どうにもざわつきを忘れられない。繰り返し、この人を見るたびに幽助は、漠然と思う。愛しい人。惜しい人。
優しい声で優しいことを言うくせに、最奥にあるものは何も優しくない。幽助はだがこの生き物を気に入っている。
気に入っている。
狂おしい生き物。蔵馬が自分の命に無頓着なのを知っている。命をかけることを、最終手段と感じていない。あらゆる手段のうちの一つとしか、認識、していない。
どうして人と違う、否、誰とも違うところに置き忘れた価値観を回収しようとしない。
幽助は、蔵馬が自分の命に無頓着なことを知っているけれど、その理由を知らない。聞かない。分からない。
「でも、でも、貴方、俺を殺せないでしょう?」
俺、貴方殺せないのにさぁ、そう言う蔵馬は少し楽しそうでもあった。うん、うん、と幽助は相槌を打って答えるしかすることがなかったのでそうした。
「じゃあ、俺、ここでなら生きていられるんじゃないですか。」
そういうことを言いたかったわけではないのだけれど、これに口で勝つことは幽助には難しく、理不尽だと思った。
可笑しかったので笑った。





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