分からせてやりたかった。




彼はいつも上手に光を探す。
襖の隙間であったり、森の抜け道であったり、僅かな星の明かりであったりする。
この世界に、一切の光の届かないところなど、そうそうないことを知っているかのようだ。建物の中、漏れ入る月明かりを真直ぐ見つける彼の瞳は、ただただ光に忠実だ。白い肌と対照的な黒い瞳に光を映す。
無意識下で光を探す。見つけると、安心するかのように瞳の色が穏やかになるのだ。ほんの少し。おおよそほかの人間では気付かないくらいに。
それを自分が気付くほどに、無償な愛しさや切なさがこみ上げて、脳でじくじくと燻る。それでも。
それでも彼の視界において意味の大きい存在でありたかった自分は、光を背にして彼を見る。そうすることで、光を探す彼の視界に上手に自分を留めておきたかったのだ。
彼は自分に視線を合わせて、自分が話をすればそれを聞く。意識下で。
しかし彼は全ての視線をこちらに寄越すことはない。瞳の色にそれを悟る。そのときの、彼にとって逆光である自分の表情は、きっとそれほど彼には見えていない。


ならばせめてと、接吻を交わす時に彼の目をそっと覆う、この掌に気付いてほしいのだ。






深海浮遊、