「いらない。」
「そう?」
僕は欲しいと思うけど、そういって雷蔵は特に気にもしない様子でぱらぱらと手元の本をめくっている。
なによりの証ではないか。自分とは違う人間を想うこと。それはなによりも、自分が雷蔵とは異なる生き物であることの証明にしかならない。
生まれ方を間違えた、と、思った。正解だなんてあり得ないけれど。
その声に、その骨に、その髪に、由来したかった。間違えないままで、そのまま、その、ま ま 。
「雷蔵、」
「欲しいよ、きっと、ずっと、必要。」
微笑む皺に、惜しいと思った。
私は愛でて、慈しむように恨むことしかできないのだろうな、と、それが私と雷蔵の違いだ。取り囲む、それを。


その枷を、