最近夢見が悪いよ、と三郎が言う。すると俺の横で、そもそも三郎ってあんまり夢見ないイメージがあるんだけど、なんて兵助が言った。問題点はそこだろうかと思うが、そういや三郎から夢の話を聞いた記憶がない気がした。兵助は小腹がすいたと言ってさっき一度、雷蔵を連れて食堂に行って半丁の冷奴をもらってきて、今まさに俺の横で幸せそうな顔してそれを食べていた。雷蔵は、おばちゃんがくれたと言って、和菓子をいくらかもってきてくれたから、俺ら三人は今それを食べていて。
雷蔵は今日どんな夢見たの、と三郎が聞いた。悪戯した三郎を追いかける夢、と雷蔵が即座に返し、三郎が一言すみませんでしたと謝る。別に夢の話なんだけどな。なんて雷蔵は言うけれど、これは今までに現実で何回も(むしろ日常茶飯事で)ある話だから、俺と兵助は苦笑いするしかなく。三郎が雷蔵から顔をそむけて口ぱくで、聞かなきゃよかった、と言ったのを俺は見逃さなかった。
兵助は?雷蔵が訊く。豆腐を食べ、まで兵助がいったところで、あーはいはい、と三郎が言葉を切って、ハチは?ときいてきた。兵助が不満そうな顔をしたが、その直後に自らの手で口に運ばれた一口の冷奴によってその表情はたちまち消えた。
俺は、どうだったかな。思いだそうとする。逆にハチはいろいろな夢を見そうなイメージがある、なんて兵助が言う。どういう意味だよ。言えば、え、別になんとなくだけど、なんて言ってまた一口豆腐を食べる。
あ、思い出した。俺が言うと、なに?と結局一番楽しそうに聞いてくるのは三郎で。
兵助が豆腐を食べてて俺らが和菓子を食べてる昼下がりの夢。正夢ってやつだな。笑って言うと、何故だか三人揃って納得したような顔をされた。ハチっぽい、と最後に雷蔵が言ったけど、俺ってそんなイメージだったか?

「三郎、寝る前に豆腐を食べると俺は高確率で結構いい夢を見られるよ。」
「そりゃ兵助だけだろうよ、」