迷って迷ってそして帰れなくなったらどうしますか?と一度次屋先輩に聞いたことがあります。
次屋先輩は、少し驚いて、それから目を細めて、そしたらその時考えようかとおっしゃいました。次屋先輩は、自分が方向音痴なこと、無自覚だから、全然現実的なものとは考えてなかったんだと、思います。だけど僕は本気だったのに。本当に迷って迷ってこの森から帰れなくなったらどうしようかなぁ。
なんて。次屋先輩は全然自覚してくれないけど、次屋先輩が迷子になるのは日常茶飯事で、委員会の途中なら、七松先輩と滝夜叉丸先輩がちゃんと探してくれている。僕や金吾も、一緒に探すんだけど、途中でもう帰っていいよ、って七松先輩か滝夜叉丸先輩がおっしゃるから、僕は金吾を連れて一緒に帰って、その日の夜は大体なかなか眠れない。
委員会でないときなら、富松先輩が神崎先輩と次屋先輩をよく探しているのをみかける。
確かに次屋先輩はよく迷うんです。しかも本人は無自覚で。何度迷子になっても捜してくれる人がいるんだもの。
「次屋先輩が迷子になっても、捜してくれる人がちゃんといるんですよね。」
そう言ったら
「俺、四郎兵衛が迷子になったらちゃんと探してやるよ。」
って言って頭を撫でられた。
それは二次災害が約束されているから、遠慮しておきますって思ったのに、どうしても言えなかったのは、どうしてだったろうな。